債務の罠に陥ったスリランカ IMFと協議

今回は視聴者のみなさんからのリクエストで、スリランカにおける中国の影響力を検証します。これは、中共が世界の多くの国にどのように影響を与えているかを示す典型的な例と見ることができます。スリランカは独立以来最悪の金融危機に見舞われています。大口融資者である中共が、その地政学的パワー増強のために、「債務の罠」を仕掛けていると非難する声も聞かれます。

スリランカの2,200万人が、悲惨な状況に置かれています。

スリランカ大統領 ゴタバヤ・ラジャパクサ氏
「我々は現在深刻な経済危機に直面しており、それは全てのスリランカ国民の生活に大きな影響を与えている」

スリランカは4月に外貨を使い果たし、食糧不足、停電や抗議デモが起きています。そして5月初めには、国の史上初となるデフォルト(債務不履行)に陥りました。

スリランカは現在、海外の債権者に対し、500億ドル(6兆5,000億円)以上の借金を負っています。

その中で、中国は第3位で、債務の約10%を占めています。

しかし、中国問題アナリストの唐靖遠(とう・せいえん)氏は、こうした状況を利用する可能性が最も高いのは中共政権であると述べます。

中国問題アナリスト 唐靖遠氏
「このようなやり取りだ。つまり、私に借りがあるから、重要な戦略的資産の管理を引き渡さなければならない」

唐靖遠氏は、ハンバントタ港を例に挙げ、その建設費のために、スリランカは中共から11億ドル(約1,440億円)を借り入れたと指摘します。これは、中共の「一帯一路構想」の一環ですが、港は収益を上げることができませんでした。

スリランカは融資の返済ができなくなり、港とその周辺の1万5,000エーカーの土地を99年間のリースで、中共に引き渡さなければなりませんでした。

しかし、なぜこれが世界の舞台で、重要な意味を持つのでしょうか?

中国問題アナリスト 唐靖遠氏
「それはスリランカの地理的位置だ。スリランカは、南アジアと東南アジア全体、さらには中東や東アフリカとの往来の主要な港と考えられており、インド洋の要とされている。中国共産党がこの港の支配権を得れば、そこに基地を建設し、スリランカだけではなく、近隣諸国にも直接政治的影響力を行使することができるようになる」

中共当局関係者は、一帯一路プロジェクトはビジネス・ベンチャーであり、援助ではないといいます。ほとんどの融資は商業的取引条件で行われ、その詳細はしばしば秘密にされています。

中共外交部は、当局は「スリランカの債務負担を軽減するために積極的な役割を果たす」用意があると述べています。

しかし、スリランカの首相によると、中共が提案したのは債務削減ではなく、更なる融資だけだといいます。

中国問題アナリスト 唐靖遠氏
「(一帯一路の)港湾戦略の背後には、中国共産党の海外展開への地政学的野心がある。それが根本的な動機なのだ」

スリランカは現在、救済を求めて国際通貨基金(IMF)と協議を行っています。

〈字幕版〉

 
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