過熱する「辱華」批判 識者「中共の劣等感の裏返し」【禁聞】

「辱華(ルゥフア)」とは中国や中国人を侮辱する行為を指しますが、いわゆる「辱華事件」が数年前から頻繁に起きています。最近では「小粉紅」と呼ばれる中国の若い世代の民族主義者から「辱華」のやり玉に挙げられる対象が、海外ブランドや外資系企業から中国ブランドや中国企業へと移行しており、本来は単なる容姿の特徴である「細目」を生まれ持ったに過ぎない人ですらも、彼らの攻撃対象となっています。

「私の小さい目は中国人としてふさわしくないのか?」「このような容姿に生まれついたことが『辱華』なのか?」

中国の菓子メーカー「三隻松鼠(スリー・スクァレルズ、Three Squirrels)」の広告塔で、「細目」事件や「辱華」事件でやり玉に挙げられているモデルの菜嬢嬢(さいじょうじょう)さんは、声を上げずにはいられなかったようです。

モデルの菜嬢嬢さんは2019年に三隻松鼠の広告塔に採用されたことで、「西洋に媚び、中国人像を醜く描いている」などとたくさんの攻撃を受けるようになり、三隻松鼠の製品に対しても不買運動が起きました。「細目(瞇瞇眼)」は一時期、検索キーワードの上位に入ったこともあります。

三隻松鼠はやむなく声明を発し、このモデルは中国人であり、中国人を醜く描く意図はなかったと謝罪して、ホームページは差し替え中だと釈明しました。

一方、菜嬢嬢さんは謝罪はせず「容姿のことは人にあれこれ言われることではな い」として、もし「すべてをいちいちネットに上げないといけないというのなら、それは一種の異常心理だ」と話しています。

シドニー工科大学中国問題専門家 馮崇義氏
「細目ですらも、中国を侮辱した(辱華)というのか!韓国人は中国人よりも細目なのに、なぜ韓国を侮辱した(辱韓)と言わないのか?このことも、(辱華が)不条理だということを示す一面だ」

こうした例は枚挙にいとまがありません。中国の国産アニメとして名を馳せた『雄獅少年(I Am What I Am)』も、登場人物の目が小さかったことで、「中国人を醜く描いた」、「これは辱華だ」と世論から批判されました。そして興行収入は手痛いしっぺ返しを食らいました。

その騒ぎも収まらないうちに、今度はメルセデス・ベンツの広告動画の女性モデルの目が細いことに気づいた中国のネットユーザーは、ベンツは「わざとやって」おり、非常に傲慢だと批判しました。その後、同社のウェイボーアカウントは問題となった動画を削除せざるを得ませんでした。

北京首都師範大学元副教授の李元華氏は、こうした批判が沸き起こる理由を、中国人の自信のなさの表れだと考えています。

北京首都師範大学元副教授の李元華氏
「この件は中国人と西洋人の美意識の違いに関係している。西洋人は眉が濃く目が大きい。だから彼らは長くて細い目を見ると、それが東洋の美女(の特徴)だと考える。もし彼らが、こんなことをやったら人々の反感を買うだろうと自覚していたら、そんなことをするはずがない」

北京のジャーナリスト高瑜さんは昨年12月28日、ツイッターに「細目について、人民日報は立て板に水のごとく14項目を書き連ねた。その核心は『細目』は一種の『辱華のシンボル』であり、長い歴史的な源がある。西側に我々の美意識を形作らせてはならないということだ」と投稿しています。

上海市消費者権益保護委員会も三隻松鼠の広告に対し、「メーカーの美意識は時代とともに発展すべきだ」との声明を発しました。

シドニー工科大学中国問題専門家 馮崇義氏
「でたらめな話だ。だが彼らはこうしたことをやるのだ。当然ながら、こうしたキャンペーンをやる度に、まだ思考能力が残っている人に、ここにある関係性を整理してクリアにさせることになる。この独裁国の世論へのコントロール、政治制度と価値観に対する不条理についてだ」

以前は「辱華」事件で攻撃されるのは海外ブランドや外国企業でしたが、今や辱華の波は中国ブランドや中国メーカーにも押し寄せています。

北京首都師範大学元副教授の李元華氏
「このような奇形な考え方が、国内製品に対しても海外ブランドに対しても拡大され、『俺は不愉快な気分になっている。俺が民意を動かしたら、お前は俺に服従しなければならないぞ』と言っているのだ」

あるメディアによると、2021年上半期だけで大きな「辱華」事件が10件も発生しており、しかもどの事件も小粉紅が「出兵して討伐」しています。

李元華氏は、辱華事件が次から次へと発生する理由を、中共のメンタルが非常に弱いことの表れだと考えています。各国が中共の本質をはっきり理解するにつれ、その行為の下劣さを意識するようになったため、小粉紅という大衆の怒りを頻繁に利用して自分自身を高揚させているのです。

北京首都師範大学元副教授の李元華氏
「表面的には、小粉紅の文化的劣等感に見える。彼らはいかなる受容性も持ち合わせておらず、実際にはこれは、統治者である中共の劣等感が具現化したものなのだ」

昨年11月、フランスの高級ブランド「ディオール」の写真の「細目」に対しても、「辱華」との批判が殺到しました。この写真を撮影した中国人写真家の陳漫(ちんまん)氏はこの件について謝罪し、一部の作品を撤去しました。

 
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