香港のシンボルが次々と撤去 進む香港人の海外移住【禁聞】

2021年のクリスマス前の二晩の間に、香港大学の天安門事件追悼オブジェ「国殤之柱」、香港中文大学の「民主の女神像」、そして嶺南大学の「天安門大虐殺追悼レリーフ」が相次いで撤去されました。この件は実際には香港市民社会のシンボルが一掃されたに等しく、香港の民主主義が徹底的に踏みにじられたことが宣告されたと海外からは見られています。

昨年の一年の間に中共は『国家安全維持法』を香港で成立させ、香港政府は中共に呼応し、民主派の各組織と個人に照準を合わせて全方位的な攻撃を行いました。9月22日までに合計153人が国安法に照らして逮捕され、その中には、予備選挙に関与した香港民主派の53人のエリート、そして蘋果日報(アップル・デイリー)創始者の黎智英(ジミー・ライ)氏なども含まれています。

国安法の圧力を受けて、昨年は50を超える香港市民の社会組織が解散や活動停止を迫られました。最もよく知られているのは、天安門事件の追悼集会『ろうそく集会』を毎年主催している支聯会、「七一デモ」の主催団体である民間人権陣線、そして48年にわたり活動してきた香港教育専業人員協会と香港最大の労働組合である香港労働組合連盟(HKCTU)などが挙げられます。

香港支聯会の秘書、蔡耀昌氏
「火種があれば、希望はある。天安門事件の名誉を回復し、民主を構築するための奮闘は、数多くの人に引き継がれる」

同じころに、香港の報道の自由は中共の圧力下で急速に悪化しました。26年続いた蘋果日報は廃刊を余儀なくされ、オンラインメディアの「立場新聞(スタンド・ニュース)」も廃刊に追い込まれました。また、公共放送局の香港電台(RTHK)の整頓、登記基準の締め付け、警察によるメディア代表の定義の修正のほか、香港政府はいわゆる「フェイクニュース」に関し法整備を進める方針です。香港メディアは今、かつてない衝撃に直面しています。「報道でのレッドライン」が極めて分かりづらいことから昨年11月に、半数近い外国人ジャーナリストが香港を離れることを検討しているとの香港外国人記者クラブ(FCC)の調査結果が発表されました。

歯に衣着せぬ報道で知られる香港大紀元時報は、以前から暴力や襲撃、印刷所の破壊などの被害に遭っていますが、警察は捜査に乗り出しません。

香港の法輪功学習者は、街頭で真実を伝える活動を続けていますが、過去に何度も嫌がらせや妨害活動を受けています。中共の行っている迫害の真相を伝える「真相スポット」は香港政府から排除され、少なくとも法輪功学習者6人が食品環境衛生署から提訴されました。

民主派が前回の区議会選挙で圧勝したことで、投票率は過去最高の71.2%に達しました。中共は感染拡大を理由に新たな立法会選挙を遅らせながら、同時に中共人民代表大会で昨年3月、香港立法会の選挙制度の変更を可決させました。選挙制度改革は海外からは「1997年(の香港返還)以降、香港民主主義が受けた最大の打撃」と見られており、この選挙制度改革には資格審査委員会など重要な機関を設置して民主派を追い出すための規定が含まれています。

12月20日、任期満了に伴う香港立法会の選挙結果が明らかになりましたが、当選議員のほとんどが親北京派でした。しかし投票率は30.2%に留まり、1998年に香港で議員選挙が始まって以来最低の投票率となりました。

香港市民 ラウさん
「すべてフェイクだ。すべてねつ造された(選挙だ)。これからもっと腐敗が進んで、もっと詐欺行為が行われるようになると思う」

香港人が昔から誇りとしてきた司法独立制度も、同様に深刻なダメージを受けています。米国の米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は年度報告の中で、複数の国安法案件の指定裁判官を名指しで批判し、香港司法機関の独立性はすでに「有名無実化」していると指摘しています。

香港の急速な変貌に直面し、各国は香港人救済計画を次々と打ち出しました。これによって香港では、いまだかつてない規模で移民熱、亡命熱、退学熱が高まり、空港では今生の別れの光景が日々繰り返されています。

香港中文大学の調査によって、取材を受けた市民の4割以上が海外移住などを考えていることが分かりました。一世代前の香港人は、中共の迫害から逃れるために香港に渡りましたが、中共が香港を引き継いでからわずか24年で、この世代の香港人は中共の統治から逃れるために再び逃亡の道を歩もうとしています。

12月10日、海外に逃れた元立法会議員の羅冠聡(ネイサン・ロー)氏は、米国のバイデン大統領から民主主義サミットに招聘されてスピーチを行いました。羅冠聡氏が最後に広東語で伝えた言葉は、香港人の不屈の心を代弁しています。

元香港立法会議員 羅冠聡氏
「希望が見えるから続けるのではなく、続けるからこそ希望が見えるのだ」

 
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