電力不足にあえぐ中国電子産業 海外移転も視野【禁聞】

中国大陸で9月末から始まった予告なしの停電は年末まで続くのかと憂慮する声が上がっています。ある事業者は、電力制限が電子産業の生産ラインの海外移転に拍車をかけるのではないかと推測しています。

アップルがリリースしたiPhone13シリーズが世界規模で品薄となり、欧米では入手に3週間かかっていますが、中国では5週間以上待つことになりそうです。

コロナ禍によるサプライチェーンの打撃やチップ生産能力の低下に加え、中国の最近のエネルギー政策や電力制限措置も相まって、iPhone13シリーズはここ数年で最も入手に時間がかかる新製品となりました。

河南省のフォックスコン鄭州工場は、以前は残業してiPhone出荷の最盛期に対応していましたが、今年はiPhone13の部品不足の影響を受けて生産ラインはフル稼働しておらず、「国慶節」に従業員に5日間の休暇を設けるという異例の措置を発表しました。

台湾の財政・経済専門家の黄世聡氏は、フォックスコンの鄭州組立工場の状況は、アップルのパーツから川下の組立や出荷まですべてに問題が生じていることの表れだと考えています。

台湾の財政・経済専門家 黄世聡氏
「主に川上と川下の中間に位置するサプライチェーン、例えば今停電が最も頻繁に起きている江蘇省昆山市一帯は、プリント基板工場や銅箔基盤工場が非常に多く、それらはアップル製品の重要な材料だ。だからその影響は非常に大きい」

江蘇省昆山市の技術開発区の多くの電子コンポーネントメーカーは、今年の10月の連休を11日間としました。これはこれまでになかったことです。

江蘇省発展改革委員会は少し前に質問を受けた際、電力不足は一部の都市が今年の電力使用指標の9割を消費してしまったからだと説明していますが、今年の第4四半期と冬場の電力使用ピーク期はどうなるのでしょうか。電力供給を止めるしかないのが実情です。

中国の金融系シンクタンク研究員の鞏勝利(きょう・しょうり)氏は、中国各地で発生した今回の電力制限措置は平等なものではなく、主にエネルギー消費量の特に多い産業と一部の中小規模の工場をターゲットにしているが、この小規模工場がその他の大型工場と繋がっているため、電子産業に衝撃を与えているのだと説明しています。

中国の金融系シンクタンク研究員 鞏勝利氏
「電力不足は小さな試練にすぎない。もし5割に電力不足が生じたら、どんな結果が生じるだろうか。これは中国の産業全体が輪番生産方式に直面する可能性があるに等しい。つまり、あなたの会社は3日稼働し、うちは4日稼働するということだ。もしこのように電力が不足した場合、もっと面倒なことになるだろう。なぜなら一部の産業、特に電子産業は電源を切ることができないからだ」

上海のあるインテリジェント設備メーカーは、広東省東莞市の工場ですでに「2日稼働5日休み」を開始したほか、江蘇省の工場では10月にも「無期限生産停止と休暇」を準備しており、この休暇はおそらく来年まで続くだろうとの見通しを立てています。

日経アジアは10月8日、広東省中山市(ちゅうざん-し)のある中規模電子パーツメーカーが、停電はもはや常態化したと明かしたと報じています。この会社には現在、一週間にわずか2日しか電力が供給されておらず、経営者は国外のどこかで新工場を借りるか新たに建造することも視野に入れるつもりだと語っています。

黄世聡氏は、サプライチェーンの外部移転は国外のコロナ禍の程度を見て決定する必要があると考えています。

台湾の財政・経済専門家 黄世聡氏
「このコロナ禍のことがあるため、メーカーの外部移転状況ははっきりしない。外部移転の進み具合は、中国自体の要素のほか、ベトナムやインドなど現地のサプライチェーンが速やかに落ち着けるかどうか、あるいは(それなりの)経済規模が生まれるかどうかによる。もしそれらが整っているなら、外部移転はもっとスピードアップするだろう」

メディアの報道によると、今回の電力制限は中国のチップ産業チェーンにも大きな影響を与え、アップル、テスラ、マイクロソフト、ヒューレット・パッカード、デルといった多くのハイテク企業のほか、クアルコム、エヌビディア、インテルといったチップ使用企業やテストサプライヤーの生産にも影響が及んでいます。

鞏勝利氏は、電力不足は中国経済の発展における巨大なボトルネックになり、電力問題が解決できない場合、GDPを上げようと思っても天に昇るより難しいだろうとして、最初にGDPの10%近くを占めるIT産業が外部移転の圧力にさらされるだろうと分析しています。

中国の金融系シンクタンク研究員 鞏勝利氏
「現在考えられる最も大きな可能性としては外部移転だ。工場設備に電力が供給されなかったら、何もできない。中国の新興電子産業が現在占めている割合は比較的大きく、10%を越えている。GDPに占める割合がかなり高い今の状況で、外部移転を除けば、中国の電力が唯一のよりどころだ。電気が来ないなら、電子産業はただのお飾りだ」

クリスマスと11月11日の「シングルデー」を目前に控え、ネット商戦が激化しますが、今年は電力制限令の影響を受け、企業の生産力と製品供給力の不確実性が高まっており、世界の消費型製品のサプライチェーンが受ける影響はさらに大きくなる可能性があります。

 
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