盗作疑惑の感染症予防専門家の名誉が回復 中共内部で派閥争いか

論文盗作の疑いをかけられていた中国の感染症予防専門家の張文宏氏に対し、復旦大学は8月23日に、張文宏氏の研究に不正な行為はなかったとの調査結果を発表しました。今回の論争は恐らく中共内部の派閥抗争が反映されていたのではないかとの見方があります。

8月23日、復旦大学学術規範委員会は、張文宏氏の博士論文盗作問題に対する調査結果を発表し、張文宏氏の博士論文は要件に合致しており、付録の概要の部分の記述に規則に合わない部分はあったが、学術的な不正行為も学術的に不適切な行為もなかったと認定しました。張文宏氏の論文盗作疑惑はこれで決着がついた形となりました。

感染症予防の専門家として中国で名の通った張文宏氏は、南京市での中共ウイルス「デルタ株」の感染拡大を受け、7月29日、微博に『ウイルスとの共存論』を発表し、ウイルスと如何に共存するかについて、各国はそれぞれの答えを出している。中国もかつては素晴らしい答えを出したが、南京の感染拡大を通して、我々はきっと多くのことを学ぶだろう』と述べました。しかし、この発言は中国当局のいう『ウイルスリセット』防疫モデルに反するとして、文革式の批判が始まりました。20年も前の博士論文がすべて掘り起こされて、盗作の疑いがあると通報されました。

時事評論家の唐靖遠氏
「張文宏氏の話は中共の痛いところを突いた。つまり中共の防疫モデルだ。張文宏氏の発言は、中共に欧米式のやり方を模倣するよう提案するに等しいものだ。だが中共は今、世界で最も優れているのは中国式の防疫モデルだと全力で誇張し、赤色制度の優位性を示している。もし欧米のやり方を真似たら、自分自身の否定に等しいではないか」

今年51歳の張文宏氏は、復旦大学付属華山医院感染科の主任です。張氏が最初に世間から注目されたのは、感染拡大の初期段階の時、「共産党員を最前線に立たせるべきだ」と述べた動画でした。

中国の感染症予防専門家 張文宏氏(2020年1月)
「共産党員は、人民の利益を第一に考え、困難に立ち向かうと誓ったのではなかったか。今から、すべての人を共産党員と入れ替えて、私にその様子を示してほしい」

歴史文化学者 章天亮氏
「党員を前面に立たせるべきだという発言は実に痛快だ。これが一つ。二つ目は、人類は新型コロナウイルスとの共存を学ぶべきだと言ったことだ。これが(中共の言うコロナの)『リセット』に直接平手打ちを食らわせた」

しかし、多くの中国人専門家、研究者、民間活動家は張文宏氏を支持しています。ポータルサイト「鳳凰網(ifeng.com)」傘下のアカウント「碼頭青年」は、「張文宏が批判された。上海は彼を守るために一番に立ち上がるべきだ」と投稿しています。

歴史文化学者の章天亮氏
「中共が張文宏氏を激しく糾弾したころ、上海市民は彼を支えた。上海市民は『武漢李文亮医師を死なせた。我々上海(人)は張文宏を守らなければならない』と言った」

注目に値する点は、「人民日報」や「環球時報」が張文宏氏を批判する報道を行った後、「科技日報」や「中国青年報」といったその他のメディアは張文宏氏を擁護したことです。これについて、今回の批判の裏には中共の派閥争いがあったのではないかと分析する声もあります。張文宏氏のこれまでの発言を振り返ると、同氏が中共内部の改革派からの支持を得ていることも考えられます。

今回の混戦がどのような形で幕引きとなるのか、今後も注視する必要があります。

 
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