上海の小学校で英語テストが禁止 習近平思想の学習時間は増【禁聞】

上海市はこのほど、秋の新学期の新カリキュラム計画を発表し、「習近平思想」を小中学校の必須科目に指定すると同時に、小学校での英語の試験を禁止しました。今回の新たな措置は物議を醸しています。

上海市教育委員会は「素質教育」と「小中学生の学業の負担軽減」を掲げて新カリキュラム計画を発表し、「習近平思想読本」を小中学校の必須科目に指定しました。上海市教育委員会は今回の通知で、いわゆる「革命文化、社会主義文化」などを小中学校の全教育課程に盛り込む必要があると強調しています。

同時に、小学3年生から5年生までの英語のテストを禁止し、未承認の外国教材などを学校でみだりに使用してはならないと通達しました。

これより前の7月8日の時点で中共教育部はすでに、「習近平思想読本」を今年の秋から全国の小中学校で一律に使用すると発表していました。

米国在住の研究者 呉祚来氏
子供たちに勉強させないようにし、授業外で学ぶことを減らし、英語学習を減らして浮いた時間を習近平思想の学習に充てる。これはまさに洗脳なのだ。英語を通じて子供は世界を知ることができ、未知の世界、外の世界を知ることができる。習近平思想の学習に大量の時間を注ぎ込むことは、主に習近平の思想、共産党の理念が洗脳のメインコンテンツになるということだ」

米国在住の研究者呉祚来(ご・さくらい)さんは「中共の今回の措置は人民統制を強化するためのものであり、個人崇拝を強化し、北朝鮮のように貧困を極めるほど社会主義を実践しやすくなる。よって対外的により強硬になり、自分の成長の扉を閉めることもためらわない」と指摘しています。

上海の李さんは取材に対し、英語は子供たちが物事の真偽を見極め、正しい人生観や価値観、世界観を身につけるためのツールだと話しています。

上海の李さん
「子供たちに英語を習わせ、外国の家庭の様子を見せ、そして異なる国の異なる人が、ある問題に対してどれだけの視点を持っているかを見て、初めて自分自身の考えを形成することができる。そして、共産党から教えられたこととは違うことに気づくのだ」

李さんは、英語は扉や窓のようなもので、英語ができなければ外の世界を見ることができず、簡単に奴隷にされてしまうと考えています。一線都市の中で上海は国民の奴隷化レベルが割合に低いため、当局は上海をターゲットにしたのだと考えています。

またロイターは、外国語学習アプリDuolingo(デュオリンゴ)が中国のアプリストアから突然削除され、アップルのApp Storeからダウンロードせざるを得なくなったと報じ、その理由について、アンドロイドの著作権の関係で中国製携帯端末のほとんどがApp storeを使用できないからだとしています。

呉祚来さんは、子供が外国語を学習する際の決定権は子供と保護者にあると考えており、この問題は本来ならば社会との調和を通じて家長委員会(PTA)や専門家、政府が協力して研究し、時間をかけて変更すべきなのに、中国では政府の力が強すぎて多くのことが干渉されていると指摘しています。

呉祚来氏
「このような全体主義の社会では、米国のような多様な選択肢や制度化された保障は得られない。米国の子供は午後3時には放課後になる。放課後になったら、子供が何をしようが、教育部門が干渉することではない」

今年3月上旬に中共国家統計局が発表した資料によると、上海の学習塾の主な科目は英語、数学、国語でそれぞれ68.6%、60.6%、41.8%を占めています。

2017年にはすでに、中共教育部のデータによって、中国では英語教育に年間約1637億元(約2兆7690億円)が投じられていることが明らかになっています。

李さん
「まず、この資料がすでに人々を困惑させている。なぜなら、彼らが国語と数学と外国語という従来の試験が必須の三教科しか統計を取っていないからだ。ここには音楽や美術を子供に学ばせるために親が投じた金額は入っていない。その額は英語学習費用よりもはるかに高いはずだ」

李さんによると、子供がピアノや絵画、国際数学オリンピックにかける費用は英語学習よりもはるかに高くなっています。

李さんは、政府のこの統計は英語テストを止めさせるための数字上の裏書だが、その信憑性、完全性は人々が掘り起こすだけの価値があると考えています。

李さんは、多くの上海人が英語を子供の第二の母語として教育しているため、政府が何を規定しようが親は子供の英語学習を止めないだろうし、高校でも英語の試験を取りやめたりはしないだろうと指摘しています。

呉祚来さんは、中共は英語教育を弱体化させ、中国と世界の関連性を曖昧にしようと考えていると指摘しています。その理由は、留学する人が増え、英語の新聞やインターネットの記事を理解できる人が増えたら、中共は洗脳工作の脅威となると考えるからです。

また、中共は家庭に重くのしかかる教育費を軽減して、若い世帯に二人目、三人目の子供を持つよう奨励し、中国の少子化問題を解決しようとしているとも考えられます。

 
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