中印武力衝突の政府発表に疑問を呈した人気ブロガーが当局から逮捕

昨年6月に中国とインドの国境で深刻な武力衝突が発生しました。インド側は20人が死亡しましたが、中国側の状況は一切明らかにされていませんでした。両国はこのほど紛争地帯からの撤収を開始し、中共の政府系メディアは当時中国軍の兵士4人が死亡したことを初めて報じましたが、この数字には疑問を呈する声もあり、信憑性に疑いを抱いたインターネットの人気ブロガーが逮捕されています。

昨年6月15日夜に、中印国境紛争地域のカルワン渓谷国境地帯で、中国軍とインド軍との間に過去40年で最も深刻な武力衝突が発生しました。インド軍はこの衝突で兵士20人が死亡し76人が負傷したと早々と報じました。

それから8か月後の2月19日になってようやく、中国政府系メディアは中国側の死傷者リストを公開し、大隊長の陳紅軍、兵士の陳祥榕(ちん・しょうよう)、肖思遠(しょう・しえん)、王焯冉(おう・しゃくぜん)の4人が仲間を救助しようとして死亡し、連隊長の祁発宝(き・はつほう)が重傷を負ったと報じています。

武力衝突で死傷者が発生していたことを北京当局が認めたのはこれが初めてです。これまで中共当局はこの件について一切言及せず、衝突の原因はインド側にあるとしたうえで、中国側が「大きな勝利」を収めたと一方的に発表し、民間で流れている情報の打ち消しに躍起になっていました。

在米時事評論家、邢天行氏
「かつての中共の操作モデルと彼らの行動の一貫した軌跡に基づいて推測すると、インドとの武力衝突で、自分に都合のいいことがなかったはずだ。彼らの目標は達成されていない。つまり勝利できなかったので多くの情報を明らかにしにくかったのだ。なぜなら中共がいろいろな情報を明らかにしてしまったら、中共の愛国プロパガンダなどに都合が悪くなるからだ」

インドメディアは、中共軍が釘バットなどの凶器を使って夜間に奇襲攻撃をかけてきたのでインド軍が応戦し、中国側に大量の負傷者が出たと報じています。米国メディアは以前に、中国側の死傷者数は35人と報じており、ロシアのタス通信は中国側の死亡者数を45人と報じています。

死傷者数を4人とした中国側の発表は疑問視されています。250万人のフォロワーを持つ人気ブロガーの「辣筆小球」(らつひつ・しょうきゅう)さんは、4人という数字の信憑性に疑念があるとウェイボーに投稿しました。「辣筆小球」さんはかつて「経済観察報」で記者を務めていた仇子明(きゅう・しめい)さんです。その後、ウェイボーは「英雄を冒涜した」ことを理由にアカウント「辣筆小球」を閉鎖し、さらに19日の夜、仇子明さんは南京警察に「騒動挑発罪」を理由に刑事拘留されました。

あるネットユーザーが投稿した「辣筆小球」のスクリーンショットには次のように書かれています。「この4人は『救助』に向かって手柄を立てたというが、救助に向かった人が全員犠牲になったのだから、救助できなかったのは間違いない。つまり死亡したのがたった4人のはずはない。インドが早々と死亡者の数とリストを公開した理由は、インドからすると勝ったのは彼らで、かつ代償が中国側より少なかったからだ」

昨年の4月から5月にかけて、中国とインドの国境摩擦が徐々に拡大し、衝突が頻発するようになりました。トランプ政権が中共封じ込めを目的として各国と形成しているインド太平洋地域包囲網も形になりつつあり、今年2月10日、複数回の交渉を経て、中共軍とインド軍はパンゴン湖から前線部隊の撤収を開始しました。

シドニー大学社会学博士 秦晉氏
「中印国境問題は北京政府の頭痛の種だ。彼らが防いでいるのは、中印国境での軍事衝突が拡大して中印戦争が勃発し、中国(中共)がインド太平洋包囲網に囲まれてしまうことだ」

邢天行氏
「インド側は戦争したいとは思っていない。だが国民感情がそこ(中共への抵抗)にあるので、後退することはあり得ない。こうした状況では、中共が再度前進しても、彼らに都合のいいことは何もない。さらに彼らは疫病や南シナ海情勢といったその他の圧力にも晒されている。だから後退するしかないのだ」

時事評論家の蘭述氏は「バイデン政権が誕生してから、米国ではトランプ前大統領の対中国強硬政策の変更が進み、いわゆる『協力による平和の希求』という対中融和政策に再度回帰しようとしている。中共はこの点を見て中印武力衝突をクールダウンさせ、米中関係や中国と西側諸国との関係をトランプ政権以前の状態に戻そうと試みている」と指摘しています。

時事評論家の蘭述氏
「なぜならこの大きな気候の中で、中共は西側世界に付け入る隙があると思っており、さまざまな手段を講じて西側社会や米国に浸透できると考えているからだ。中共のグローバル戦略はバイデン政権時代に入ってからいくつかの調整が行われている」

昨年、中国のインターネット上にカルワン渓谷で死亡した陳祥榕(ちん・しょうよう)の墓の写真が広まりました。しかし当局はメディアを動員して、その写真は「デマ」であると非難しました。現在この写真は再度中共によって「ポジティブなプロパガンダ」として使用されています。