中国によるハリウッド映画の検閲を廃止させる法案【英語ニュース】

ハリウッド映画への北京の検閲を止めるため、5月下旬、テッド・クルーズ上院議員が法案を提出しました。この法案が可決されれば、中国の検閲を受けると連邦政府によるハリウッドスタジオへの援助が打ち切られます。

テッド・クルーズ上院議員/テキサス
「大手ハリウッド映画制作会社にとって、ジェット機や戦車を利用したり、米軍基地や空母で撮影するため、国防総省と契約を締結するのは一般的な事です。スクリプト法はハリウッドへの警告であるべきです。制作会社は連邦政府からの支援を取るか、中国からの出資を取るかの選択を迫られます」

2019年中国の映画市場は、米国に次ぐ世界2位で90億ドル以上を売上げました。ハリウッドの上位25本の映画において、世界の興行収入の10%以上を中国が占めています。ハリウッドは米国のポップカルチャーの重要は部分で、かつてアメリカンドリームの代名詞でした。しかし今では、収益性の高い中国市場と引き換えに、ますます北京の検閲に応じています。

マイク・ペンス/米副大統領
「北京の検閲はどんな些細なことでも、中国を批判した映画はすぐに編集又は非合法化します。『WORLD WAR Z』では、ウイルスに言及した台本をカットする必要がありました。中国を発生源としていた為です。映画『Red Dawn』は悪役を中国人ではなく、北朝鮮人にするためにデジタル編集されました」

同様の編集が2016年、マーベルコミック原作のスーパーヒーロー映画「ドクター・ストレンジ」でもありました。古代のものとして知られているチベット族のキャラクターを中国当局の気分を害さぬようケルト人に変更しました。

テッド・クルーズ上院議員/テキサス
「年末に公開予定の『トップガン』続編では、中国共産党をなだめるためにマーべリックのジャケットの背中にある、台湾と日本の国旗が取外されました。考えてみてください。何のメッセージが送られたのか。アメリカの象徴であるマーベリックが中国共産主義者を恐れているのです。馬鹿げています」

中国政府が一年に公開を許す映画はわずか約40本です。多くの制作会社が自分たちの作品を中国の7万の映画館で上映するために中国をなだめ、検閲を受け入れます。

テッド・クルーズ上院議員/テキサス
「その数は意図的に抑えられています。上映権利と引き換えに、米国の映画会社は、中国の検閲側に映画を提出し、検閲側はしばしば映画の変更を強要します。米国企業はこの事実を知っていて、提出前ですら、時に映画を編集しています。その結果、彼らは中国の観客が見るものだけでなく、米国人が見るものも支配しています」

40本の映画配給枠に入れるため、米国のプロデューサーはしばしば中国の制作会社と手を組みます。

アイン・コカス/バージニア大学メディアスタジオ准教授
「多数の米国の制作会社が、中国の規制当局に制作過程のあらゆる段階において、内容を構成できるようにする見返りに、映画の割り当てを潜り抜ける公式な米中映画共同制作に参加します」

その一例が、総製作費1億5000万ドル(約160億円)のマット・デイモン主演映画「ザ・グレート・ウォール」(2016)です。この映画は公開後にごまかしを理由に批判され、7500万ドルもの損失を出しました。内容の取締りに加え北京政府は、特定の俳優が当局に批判的な発言をした場合には、出演を禁止されます。

マルコ・ルビオ上院議員/フロリダ
「特定の映画に出演許可されない俳優がいるから、大ヒットの映画を中国で配給することを許されないのです。リチャード・ギアのように、彼の映画を中国で見ることはできません。彼はチベットを支持しているからです」

人権活動家として積極的に発言するギアは、「北京のふたり(原題:Red Corner)」(1997)に出演しました。この映画は、中国の司法制度の腐敗を暴露する内容を含んでいたため、中国で禁止されました。ブラッド・ピットもまた、中国で2014年まで禁止されていました。中国当局による、チベットの支配が物議を醸していることを題材にした映画に出演したからです。

中国では米国映画を厳しく制限している一方、中国企業は米国の映画館や映画制作会社を買収してきました。2012年中国の制作会社「ワンダ」は米国で二番目に大きい映画館チェーン「AMC」を26億ドル(2600億円)で買収し、数年後の2016年、ハリウッドを率いる制作会社「レジェンダリー・エンターテイメント」を35億ドル(3500億円)で買収しました。中国のIT企業「テンセント」、「アリババ」もまた、ハリウッドの制作会社に増々投資をしています。

米国の映画産業の本拠地であるカリフォルニア州の州議員ブラッド・シャーマンは指摘します。

ブラッド・シャーマン/カリフォルニア
「南カリフォルニアにいる私たちは世界の夢と想いを形にしていることを誇りに思っていますが、中国が好む物語を広めるために、北京で形作られるべきだと考える人もいます」。中国政権の経済的強要が、米国の表現の自由を妨げていると言います。

しかしパンデミックが続く中、経済力が損なわれ、1月下旬以来、中国の映画館は閉鎖されています。彼らは6月の再開を期待していますが、今年の興行収入は半減し、約42億ドル(約4200億円)にしか達しない見込みです。ハリウッドも混乱し、映画制作は中断し、メジャー映画の公開は来年か2022年まで延期されました。

世界的なパンデミックの中で、中国の役割の調査を求める国々が増え、米中の緊張が高まり、ハリウッドは結局、中国と親しくなろうとする関係を再考せざるを得ないかもしれません。

 
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