中国に新型コロナウイルスが急速に広まった理由を専門家が分析

中国の習近平主席は2月23日、武漢での新型コロナウイルス感染状況について、中共政権設立以来感染速度が最も早く、感染範囲も最も広く、防御・制御の難易度が最も高い突発的な重大公共衛生事件であると認めました。今回の肺炎の感染状況や、防御と制御、転換期及び潜伏期間などの問題について、欧州在住のウイルス専門家、董宇紅(とう・うこう)博士にお話を伺いました。

董宇紅博士は北京医科大学を卒業後、北京大学で感染症学博士号を取得し、北京医科大学付属第一医院に勤務しました。17年にわたりウイルス研究と臨床現場で活躍したのち、製薬世界大手のノバルティスで製薬研究開発に携わり、現在はスイスのバイオ企業で首席科学官を務めています。

今回の新型コロナウイルスが中国大陸に急速に広まった理由について、董宇紅博士は、いかなる伝染病の流行においても、感染源(ウイルスに感染した人又は動物)、感染経路、易感染者(いかんせんしゃ)という三つの部分を切り離すことはできないと指摘しています。

欧州在住のウイルス研究者、董宇紅博士
「今回ウイルスはなぜこのように急速に中国大陸に広まったのか。まず、この肺炎ウイルスの発生源が今に至っても明らかになっていないのだから、速やかな制御などできるはずもなかったと考えている」

武漢市の衛生健康委員会が発行した通達には、新型コロナウイルス肺炎の最初の症例が見つかったのは昨年12月8日と記されていますが、武漢金銀潭医院の黃朝林(こうちょうりん)副院長などが1月24日の医学雑誌ランセットに発表した論文には、最初の患者の発症日は12月1日で、この患者は華南海鮮市場に接触していないと記されていました。

欧州在住のウイルス研究者、董宇紅博士
「この論文の情報を見ると、41の症例のうち1/3以上の症例が実は海鮮市場と無関係だ。これは彼らが最初の患者でないことを裏付けている」

ウイルスの「感染経路」の部分について、董宇紅博士は政府が発表した飛沫感染とエアロゾル感染、ヒト-ヒト感染のほかにも、新型コロナウイルス肺炎には別の特殊な感染特徴があると指摘しています。

欧州在住のウイルス研究者、董宇紅博士
「最も特異な点は、患者が潜伏期間にあり、まだ何の症状もない時からすでに感染が可能になっているという点だ。現在すでに多くのスーパースプレッダーが見つかっている。彼らは一人で多数の人間に、多ければ10人以上に感染を広めることができる。このような感染特徴は、このウイルスの感染力が相当強いということを表している。このウイルスの防御は難しいという点も非常に重要な要素だ」

最後の部分は「易感染者」です。

欧州在住のウイルス研究者、董宇紅博士
「易感染者群について、(政府は)武漢ウイルスの易感染者を保護するために効果的な措置をタイムリーに講じなかった。新ウイルスの発生時には、一般に易感染者を保護できるワクチンも、既存の有効な薬もない。そのうえ旧正月の帰省ラッシュを間近に控えていた。武漢の人口は1100万人以上だ。責任感のある政府であれば、易感染者を保護できる措置を決断すべきだった」

中国メディア「第一財経」が作成したタイムラインによると、1月3日の時点で中共は米国とWHOに感染状況を報告し始めましたが、国内に向けてはヒト-ヒト感染は起きておらず、医療従事者も感染していないと発表していました。1月6日から10日には旧正月の帰省ラッシュが始まりましたが、武漢衛生健康委員会は感染増加について何も通達せず、1月14日、衛生健康委員会の専門家、徐建国氏はさらに「来週に新たな患者が出なければ、流行は収束するだろう」と述べました。1月19日、武漢の百歩亭居住区では大食事会「万家宴」が開かれました。

欧州在住のウイルス研究者、董宇紅博士
「四万世帯以上が一堂に会して大宴会を催したため、この百歩亭居住区で大量の感染者が発生した。当局が1月上旬に米国に感染状況を報告したのと同時に大衆に感染状況を公開できていれば、感染拡大をタイムリーに食い止められたはずだ。しかし政府は発表せず、一貫して隠し続けた」

董宇紅博士は、パンデミックが発生するには、感染源、感染経路、そして易感染者の三つの部分を互いにつなげるための「外部の力」が必要だと指摘しています。

そして今回の感染拡大を引き起こした「外部の力」とは、ほかでもなく政府から来ています。

欧州在住のウイルス研究者、董宇紅博士
「武漢市中心医院の李文亮医師の件は、知っての通り非常に残念な話だ。彼は医者として患者を救うという義務を果たし、人々に情報を流しただけで当局から口を封じられた。その後、中国は感染を制御する絶好の機会を再三失った。さらに彼らは流行の可能性を明かさなかっただけでなく、感染状況を伝えた医療従事者や民衆を拘束した。そして事情を知る医療従事者に感染について口外しないよう要求した。同時に政府系メディアは、感染について「防御もコントロールも可能」「ヒト-ヒト感染は起こっていない」などと虚偽の情報を宣伝して民衆をだました結果、最終的にウイルスが猛烈な速さで全国に広まることになった」

中国の現在の感染状況は本当に「防御もコントロールも可能」なのでしょうか。博士は、新型コロナウイルスの特性と、政府が感染の流行過程に与えた影響から見ると、完全にコントロール不能な状態に陥っていると言っても過言ではないと指摘しています。

 
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