操業再開を急ぐ中国企業 専門家「世界のサプライチェーンから排除される恐れ」

中国の複数の都市で企業が旧正月明けの再操業に踏み切っていますが、新型コロナウイルスへの感染リスクも依然として高く、サービス業も深刻なダメージを被っています。
2月10日から中国企業が操業を再開し始め、2月18日までに1億6000万人が職場に復帰する見通しです。北京、上海、重慶などの複数の都市は、感染流行地帯から帰ってきた従業員に対し、14日間の自宅待機を命じると発表しました。

上海市民
「大勢が故郷から上海に戻ってきた。彼らを一定期間隔離する必要がある。(リスクには)二次感染も含む。実際のところ、原則的にはみな、少なくとももう一週間休まなければならないと認識している」

中国の求人サイト「58同城招聘」が発表したビッグデータ報告によると、2月10日に操業を再開した中国企業は全体の約47%で、約15%は2月10日以降にずれこむほか、約27%の再開時期は未定となっています。

専門家は、中国の複数の都市がいまだ封鎖状態に置かれていることを挙げ、例えば自動車部品の一大生産地の武漢が止まったままだと、川下企業が操業再開しても生産を回復させることはできないと指摘しています。

米サウスカロライナ大学エイケン校 謝田教授
「慌てて操業再開した理由の一つは、多くの企業で従業員が戻って来られない可能性があるからだ。もう一つは、原材料をどうやって入手するか、原材料が手に入っても生産された製品を輸出できるのかという懸念がある」

サービス業も同様の死活問題を抱えています。恒大(こうだい)研究院は1月末に、新型コロナウイルスの影響を受け、7日間の旧正月休暇の間に、飲食業界の小売売上高における損失は5000億元(約7兆8500億円)に達したと推定しています。

香港地理証券有限公司CEO フランシス・ロン氏
「エンターテイメント企業、レストラン、小売業者のどれもが倒産しそうだ。なぜならこれは災禍だからだ。これは基本的にはウイルス戦争だ。我々は、(中国と香港経済)の回復には一年はかかるだろうと考えている」

北京大学の黄益平(こう・えきへい)教授は、サービス業の全従業員の5%が失業した場合、2000万人が失業することを意味すると警告しています。

米サウスカロライナ大学エイケン校 謝田教授
「資金の流れから言うと、これらの企業が一か月休業した場合、8%の収入が途絶えることに相当し、二か月になると16%、三か月だと24%になる。中国の大部分の企業にとっては、サービス業の利益率はおそらく10〜20%だ。3か月以上持ちこたえられるはずがない」

感染拡大が経済に与える深刻な打撃は世界規模で広まっています。例えばブラジルの工業市場と欧州の薬品市場は中国製品への依存度が高く、今もサプライチェーン中断の危機に直面しています。また、中国の製品とサービスへの依存度が最も高いとされる韓国、日本、米国もまた、同様の衝撃に見舞われています。

米連邦準備制度理事会(FRB)議長 ジェローム・パウエル氏
「サプライチェーン問題は重要だ。我々も中国から多くの半製品と完成品を輸入している。これは問題になる」

米サウスカロライナ大学エイケン校 謝田教授
「世界の他の国は、中国からの製品供給を得られなくなると、すぐに他国の供給業者を見つけるだろう。このことは中国企業が世界のサプライチェーンから排除される可能性があることを意味している。これは中国により大きな影響を与える。パンデミックが去ったとしても、この部分のビジネスはおそらく永久に戻っては来ないだろう」

 
関連記事