【動画ニュース】長江の川底が露出 水不足は人災か(上)

長江とその流域で水の流量が減り、至る所で川底が姿を現しています。中国メディアは歓迎ムードですが、専門家は警鐘を鳴らしています。

唐代の詩人、李白はかつて長江の流れを「孤帆の遠影碧空に尽き(こはんのえんえい へきくうにつき) 惟(ただ)見る長江の天際(てんさい)に流るるを」と表現しましたが、今の長江にかつての悠々とした大河の面影はありません。長江流域の武漢市の至るところで川底が姿を現しています。

武漢市内を流れる長江には10本の大橋がかけられていますが、うち白沙洲、天興洲、鸚鵡洲などの長江大橋では、川の中心に大面積の砂泥(さでい)や細長い「道路」が現れ、天興洲は長江の北岸と地続きになりそうです。そこでは人々が水中からあらわになった中州(なかす)で、凧を挙げたりオフロード車を走らせたりする様子も見られます。

武漢からほど近い観光名所、鄂州(がくしゅう)観音閣では、本来は水面下にあるはずの岩石でできた台座部分も、水面から大きく露出してしまいました。

生態系に大きなダメージを与えると思われるこの異変について、武漢の現地メディアは「武漢人民が長江の川底が現れたことを続々と報告」と報じ、「人々は川底の雰囲気を味わっている」と嬉々として伝えました。

また長江武漢航路局は、今年の長江の水位が低いのは、長江流域全体で夏以降の降水量が少なかったからだと説明しています。

一方、ドイツ在住の著名な水利専門家の王維洛(おう・いらく)氏は別の意見を述べています。

ドイツ在住の中国人水利専門家、王維洛氏
「6月に長江の支流のカン江と、鄱陽湖につながる5本の河川流域で洪水が発生し、大きな被害が出た。7月には湖南省でひどい洪水が起こったが、中国メディアは沈黙した。ほとんどは中国のネットユーザーが自分でインターネットに『今年の長江の中下流域の洪水の水量は、すでに1998年の水量を上回っており、水位も超えている』という情報を投稿した」

インターネットに公開された動画によると、この夏の鄂州観音閣は水面に「浮かんで」おり、基礎の部分は完全に水面下に隠れていました。

水文(すいもん)関係資料によると、7月に鄂州市の長江の水位は警戒水位の前段階である「設防水位」を上回っていたことが分かっています。

ドイツ在住の中国人水利専門家、王維洛氏
「つまり、彼らのいう『今年の夏以降、長江中下流域の降水量は少なかった』という話は間違っている」

湖北省だけでなく、江西省北部の鄱陽湖(はようこ)も草原に変わり、人々のキャンプスポットになっています。

ドイツ在住の中国人水利専門家、王維洛氏
「今年、鄱陽湖に(低)水位が現れた時期は、例年より2か月も早かった。12月6~7日の数日間で、この水位はすでに7.34メートルまで下がった。これは過去最低ラインをさらに下回っている。みなこのことを心配している。鄱陽湖は長江流域で最大の湖だ。その湖の底が露出して大草原になってしまった。自動車を走らせて遊ぶこともできる」

長江と鄱陽湖の深刻な水不足の本当の原因は何なのでしょうか。

ドイツ在住の中国人水利専門家、王維洛氏
「一つ目の原因は、三峡ダムの逆調節だ。つまり三峡ダムは渇水期に水を蓄えた。下流に流れる流量を遮って、水をダムに蓄えた。洪水の時はダムに水を貯えず、今年の7月のようにダムに水を溜めずに放水量を増やした」

王維洛氏は、三峡プロジェクトは自然の摂理に逆らって逆調節したことで、夏場の洪水被害を拡大しただけでなく、冬場の水不足も深刻化させたと指摘しています。

ドイツ在住の中国人水利専門家、王維洛氏
「二つ目の原因だが、長江中下流域が影響を受けるのは、以前は三峡ダムプロジェクトだけだったが、今は28もの大型ダムに直面している」

王維洛氏によると、当初、三峡ダムプロジェクトでの土砂の堆積(たいせき)を防ぐため、中共は上流に28のダムを建設しました。この28のダムは渇水期に、三峡ダムの貯水量221.5億立方メートルの約2倍に相当する、合計500億立方メートルもの水をせき止めることができます。

ドイツ在住の中国人水利専門家、王維洛氏
「三つ目の原因は、三峡ダムから土砂を含まない水が流出することだ。この流れが長江支流の川底を深く掘り下げている。その結果、渇水期になると長江の水が洞庭湖や鄱陽湖、洪湖などに流れ込まなくなる」

ダムの水は基本的に動かないため、土砂はダムの底に沈んでおり、ダムから流れる水は土砂を含んでいません。土砂を含まない水が流れることで川底が掘り下げられると、長江支流の水位が流域の湖よりも低くなり、川と湖が水を補い合うという、もともと備わっていたメカニズムが破壊されてしまいました。これが渇水期の湖の水不足にさらに追い打ちをかけ、湖底が露出した原因だと王維洛氏は説明します。

王維洛氏は、三峡ダムプロジェクトによって流域の生態系のバランスを取るという長江の役割が破壊されたために、一連の結果がもたらされたと指摘しています。また、長江はすでにひどく病んでいるとも警鐘を鳴らしています。

 
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