【中国の古代物語】忘れられた宝

むかしむかし、中国のあるところに、貧しい男がおりました。ある日のこと、男は裕福な親戚の家を訪ねました。やさしくて気前のよい親戚は、男をとても歓迎しました。男は大いに飲み、お腹いっぱい食べると、ウトウトと眠りに落ちてしまいました。

折しも、裕福な親戚は、仕事のトラブルを処理するため、すぐにも家を出なければならなくなりました。裕福な親戚は、男を起こそうとしましたが、男は目を覚ましません。そこで、裕福な親戚は、男の服に真珠を縫いつけてから家を出ました。その真珠は、「知恵」と名付けられた、とても貴重なものでした。

貧しい男は、自分の身に何が起きたのか全く気づいていませんでした。そのため、男は目を覚ますと、再びホームレスのような生活をはじめました。あいかわらず貧乏で、毎日の食べ物にことかくありさまでした。男は、自分の服に縫い付けられた、高価な真珠のことに気づいていなかったのです。

しばらくして貧しい男は、街で裕福な親戚とばったり出会いました。男がボロボロの服を着ているのを見て、裕福な親戚は深いため息をつきました。「そんなバカな‥‥。あんたは苦労して、着る物や食べ物を探しているのかい? 少しはましな生活を送っていると思っていたのに。あんたがうちに来たとき、私はあんたの服に、とても高価な真珠を縫いつけておいたのさ。それに気付きさえすれば、裕福な生活を送れたのに‥‥。着る物と食べ物を探すのに夢中で、真珠の存在に気づかなかったなんて‥‥」

もう、お気づきですか?

この話は、私たちがこの世界に生まれてくる前に、神様から「知恵」という宝を授けられていることの暗示であることに。そして、私たちは貴重な真珠の存在を忘れ、差しせまった欲望にきゅうきゅうとし、人生の再出発をあと伸ばしにしてしまっているということに。