【動画ニュース】中国で「宿題ロボット」が話題 教育体制への批判の声も

中国では旧正月の休暇が終わり、小中学校では新学期を迎えました。いっぽう、子どもたちにとって最も苦しいことは、やはり宿題の提出です。冬休みに出された膨大な量の宿題を完成させるために、黒竜江省のある女子中学生がお年玉で「宿題ロボット」を購入し、宿題を書かせました。このことは中国で話題となりましたが、中国の教育体制に対する批判の声も聞かれました。

黒竜江省ハルビン市の張さんは、中学3年生の娘に2月24日までに冬休みの宿題を終わらせるように求めていました。2月13日、娘はわずか2日間で国語の大量の書き写しを完成させました。誤字もなくきれいな字で書いているので、張さんもホッとしました。

しかし、娘の部屋の掃除をしていた時、見たことのない機械を発見しました。説明書には、この機械は各種の筆跡を模倣して指定した内容を書き写すことができると書いてあるのです。娘に問い詰めたところ、お年玉から800元を出して、ネット通販でこの「宿題ロボット」を購入したと白状しました。激怒した張さんはその場でロボットを叩き壊しました。

報道によると、中国のネット上ではこの種の字書きロボットが数多く販売されています。価格は400元から1200元など様々で、1分あたり40文字の字が書けるとのことです。あるネットショップのオーナーによると、旧暦新年のあと、字書きロボットに関する問い合わせは小・中学生からがほとんどで、問い合わせがもっとも多かったのは、「先生にバレないように、筆跡の模倣ができるかどうか」のことだったそうです。

広東省深セン市の販売業者によると、字書きロボットは実は以前から販売されていたが、ほとんど知られることがなかったそうです。今回メディアの報道によって、一気に火がつき、品切れ状態になっているとのことです。

一方、字書きロボットに対し、否定的意見も少なくありません。あるネットユーザーは、「素晴らしい発明だが、使い道が間違っており、子どもを害している。良心が痛まないのか」と述べています。

今年大学を卒業する李さんも、この種の製品には賛同できないと述べます。

中国の大学生 李さん

「ロボットによって宿題は完成しても、授業で習った内容が全部理解できたとは限らない。中学生の時期は多くの学科の勉強が必要だ。数学と国語の宿題を交互に書くことで、休憩の代わりになる」

いっぽう、中国の学校は宿題が多すぎて、子どもがこの種のロボットを使ったとしても、どうしようもないとの声も聞かれます。

子どもの保護者 盧さん

「多くの親はどうしようもないと思っている。学校で出された宿題が多すぎて、子どもは宿題完成のために、この種の機械を買う。国の教育が詰め込み教育なので、成績だけが重要視され、子どもの生活品質は考慮していない」

中国の首都師範大学教育科学学院の元副教授、李元華(り・げんか)さんは、需要があるからこの種の製品が生み出されたと述べます。

中国首都師範大学教育科学学院元副教授 李元華さん

「字書きロボットの発明者は中国のこの種の教育市場を狙っている。教師のプレッシャーも非常に重い。特に中国の多くの教育内容は子どもに適さない内容、あるいは政治的な内容であるため、子どもも教師も興味がない。だから、単純に何度も繰り返すという方法を取る。結果、保護者も子どもがこの種の機械を使うのを黙認するしかない」

一部の保護者は、中国では多くの教師が宿題のチェックをしっかりしていないと指摘します。子どもが苦労して宿題を完成させても教師がまともに見てくれないのなら、ロボットを使うことに賛成すると言います。いっぽう、李さんは、ロボットを使うことは子どもの成長に不利な結果をもたらすと考えています。

中国首都師範大学教育科学学院元副教授 李元華さん

「目的達成のためには手段を選ばない人になってしまう。中国では宿題が完成できないと数倍の懲罰を与えられる。だから子どもたちはお年玉を使って字書きロボットを買って先生を騙すしかない。結果的に、子どもは嘘つきに育つ」

李さんは、中国では共産党による洗脳教育は幼児の時から始まり、子どもたちは中国共産党が定めた模範解答を目指して知識を学ぶため、最終的には試験のためのロボットになってしまうと指摘します。

中国首都師範大学教育科学学院元副教授 李元華さん

「このような教育体制の下では、子どもは最終的に良い成績が取れても実際の能力がない人になるかもしれない。自分の考えを持ち、イノベーションの意識を持つことなどは、教育の過程で抑圧されて、なくなる」

あるネットユーザーは、「教師は生徒をロボットに養成しようとしている。生徒がロボットを使って教師に対処することで、時間の節約ができ、その節約した時間を思考能力を培い創造力を高めることに費やすのも、悪くないかもしれない」と示しています。

しかし、本当にそうなのでしょうか。いわゆる創造力を高めるために、中国人は今、一体どこへ向かっているのか。一考に値する課題かもしれません。

 

 
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