【動画ニュース】米中貿易戦争で中国経済が悪化 中国当局が経済ニュースの情報統制

米中貿易戦争の激化により中国経済に影響が現れる中、中国当局は景気の後退に関するニュースについて報道規制を行っています。この措置は中国経済が日増しに弱体化していることに対し、当局が危機感を募らせていることの表れだとの分析があります。

中国当局は9月28日、国内メディアに対し6つのテーマに関する報道規制を命じました。アメリカのニューヨーク・タイムズによると次の通りです。

・経済データが予測を下回り 中国経済に明らかな悪化傾向が見えている

・地方政府の負債リスクは すでに危険性をはらんでいる

・米中貿易摩擦の影響の露呈

・国内の消費者信頼感指数の低下

・スタグフレーションの予測

・社会の関心事を借りて 人民の生活苦をあぶりだす

今回の指示は中国経済がますます弱体化する可能性があること、そして米中貿易戦争が始まる前に、中国人がすでに消費を控える傾向にあったことに対し、当局の上層部が危機感を募らせていることの表れだと、ニューヨーク・タイムズは指摘しています。実際に、工業分野の経済成長は4カ月連続で減速、株式市場も過去4年間の最低水準まで落ち込んでいます。

報道によると、9月28日付けの別の通知で、ネットメディアに中国経済の衰退を思わせる記事を削除するよう要求。「スタグフレーション」「新たな難民」「消費の停滞」なども中国経済の衰退を示す「有害な言葉」とみなされています。

米国在住中国問題研究家 張健氏

中国では政治に関する話が最も敏感なテーマとされ、経済問題に関しては規制が比較的緩やかだった。しかし 中国経済が悪化の一途をたどると、当局は経済ニュースを厳しく統制する。だが経済問題とはつまり国民生活にかかわるテーマだ国民一人一人が毎日インフレや学費 医療 住宅問題で頭を悩ませ、なぜこんなに景気が悪いのだろうとみな考えてしまう

ニューヨーク・タイムズは匿名を条件に取材に応じた中国人経済記者の話として、過去1年間、彼らは仕方なく「軟らかい表現」で経済ニュースを報じてきたとしています。

雑誌『北京の春』名誉編集長 胡平氏

中国当局は 貿易戦争により、中国に多くの経済問題が生じて経済が下降に転じ、企業の破たんや倒産 失業問題が生じ、住宅市場 株式市場 債券市場 外貨市場が混乱するのを恐れている。こうした問題がいったん表面化して人々の予想を越えると、一般市民はおろか体制内部からも不満が噴出する恐れがある。こうした状況により、当局が更に深刻な状況に追い込まれる恐れがあるため、当局はメディアに対する報道規制を格段に強化する

中国ではすでに複数の経済メディアが当局による規制を受けています。9月26日、中国インターネット情報事務局は鳳凰(フェニックス)ネットの一部チャネル、「鳳凰ニュース」のクライアント端末及びウェブサイトの中に「違法な不良情報の報道、ニュースタイトルの本来の意味の歪曲、ニュース情報の違法な転載といった問題」が存在するとして、全面的な修正を命じています。

あるメディア関係者はラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、鳳凰ネットに対する規制は恐らく2つの論評に問題があったからだと指摘しました。1つは「巨額の財政支出を負担するのは誰か」という時事論評の転載、もう一つは「先祖の土地の上で流浪する」とのタイトルで、「国有企業の前進と民間企業の後退」に関する経済問題を取り上げていました。

「網易(もうい)財経」の記事も修正されましたが、その理由について「香港経済日報」は、論評「個人所得税法修正案」が北京当局を慌てさせたからだろうと指摘しています。

アメリカの中国語雑誌「北京の春」の名誉編集長、胡平(こ・へい)さんは、当局は人々が悪い「予測」をしないよう、情報を統制する必要があると分析しています。

雑誌『北京の春』名誉編集長 胡平氏

銀行が破たんするとみなが思い込めば、銀行に押しかけて取り付け騒ぎを起こすだろう。そうすれば銀行が破綻し 連鎖反応が起きる。当局の報道規制の宣言は、民間 社会 あるいは体制内部から挙がるさまざまな声、多様な批評 意見を断固として封じるという意志表明である」

米国在住中国問題研究家 張健氏

いったん経済が破たんしたら 、軍事クーデターや政変 軍の反乱などが起きる恐れがある。当局はそれを非常に恐れているため、厳重に警戒し すべての発言権は当局が握らなければならないと考えている

その一方で張健(ちょう・けん)さんは、中国経済はすでに臨界点に達し、大きな困難に見舞われているため、当局がいかに情報統制を行っても、すでに危機に直面しているとも指摘しています。

 
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