中国の人材招致国家戦略「千人計画」 FBIが警戒強める

米国では、外国の高学歴・高経歴のハイスペック人材を募る中国国家プロジェクト「千人計画」を懸念する動きが広がり、米連邦調査局(FBI)が警戒を強めているとみられる。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)がこのほど報じた。

VOAは複数ルートの情報として、世界一のがんセンターといわれるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターが、同計画に参加する中国系教職員の解雇に乗り出していると報じた。

同センターは、VOAの問い合わせに「内部の人事につきコメントを差し控える」と返事した。

今年2月、FBIのクリストファー・レイ長官が上院議会の証人喚問で、米経済および安全保障を脅かす中国の努力は「学術領域に及んでいる」、「業界は中国の脅威、中国が導いた脅威に無防備すぎる」と注意喚起した。

中国政府の公式情報によると、2008年に発足した同計画はこれまでおよそ8,000人を招き入れた。応募要項は「国籍不問、55歳以下、海外で博士号取得、外国の著名な高等教育機関・研究機関で教授以上のポスト、国際的に有名な企業・金融機関の上級管理職経験者や専門技術者」など。中国での研究活動は「年間半年以上でOK」とあり、本業兼務が可能となる。

米テキサス工科大学は8月はじめ、中国・ロシア・イランの人材誘致に協力した教職員に対して大学側への事実関係の申告を求める文書で、この千人計画を名指した。

アメリカでは昨年から、ゼネラル・エレクトリック社(GE)のチーフエンジニアの鄭小清氏(56)、バージニア工科大学の教授パーシヴァル・ジャン氏(47)、米気象専門家の王春氏(56)ら同計画に採用された中国系科学者複数人は、スパイなどの容疑であいつぎ逮捕された。

米大学や高等教育関連機関の連合組織となる米国教育協議会(American Council on Education:ACE)の幹部はVOAに対し、FBIは中国政府の人材誘致戦略を警戒しているのは確かだとして、ACEとFBIは情報交換を保ち、FBIの明確な指示を得られ次第対処すると話した。同計画のほか、一部の米大学に進駐している中国の「孔子学院」もFBIの監視対象だという。

もちろんハイテク大国の日本にも関わってくる。

千人計画のウェブサイトによると、いまや人材発掘担当に抜擢された幹部の王氏は、1986年に日本に留学したスーパーエリートである。王氏は筑波大学で物理工学の博士号を取得したのち、公的研究機関勤務を経てハイテク企業「つくばテクノロジー」を設立。同社は日本政府から6億円あまりの研究資金を給付され、国内外で100以上の特許を持っているという。

 
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