【ドイツ】外資出資比率規制25%⇒15%に大幅強化 中国の脅威が念頭

ドイツ政府が中国企業によるドイツ企業の買収阻止に相次いで動いています。中国による企業買収の拡大を警戒し、昨年から規制を強化して以来、欧州連合(EU)域外の投資家によるインフラ企業などの買収を、政府が拒否できるようにしています。

ドイツ政府は、現在、EU域外企業出資比率規制を25%から15%に引き下げようとしています。

ドイツのペーター・アルトマイヤー経済大臣は「私たちは、ITセキュリティのような、防衛や安全、テクノロジーに密接にかかわる事項を扱っている会社をもっとしっかり守っていけるようになりたいのです」と述べました。

アルトマイヤー氏によると、ドイツ政府は、海外からの投資を遮断したいわけではなく、むしろ海外の買い手とその目的をよりよく把握しておきたいとのことです。。

ドイツの外国貿易と支払いに関する法律の修正法案はいくつかの省庁に送られました。ディ・ヴェルト紙によると、ドイツ政府により大きな権限を与える法律は今年中には発効するだろうとのことです。

「もちろん、私たちはより多くの国の投資を望んでいますが、私たちには、安全と社会的秩序という利益を守る責務があります」とアルトマイヤー氏は言います。

ドイツの最近の動向は主に中国の投資家を標的にしています。というのも、ドイツ政府は中国がヨーロッパの企業を利用して主要な技術やノウハウを取得しようとしているのではないかと懸念しているからです。

2018年6月12日にドイツのハノーファーのCeBITテクノロジー貿易フェアで展示されたアウディーのELAINE人工知能車 (Alexander Koerner/Getty Images)

「中国の戦略の核心部分にあるのは、国際市場に進出し、企業やテクノロジーを買収しようと試みることです。国有または国家が資金を提供している中国の企業がよくこれらの事業を獲得しようと試みます」と米シンクタンクである情報技術・イノベーション財団のステファン・エゼル副社長は言います。

「彼らは、市場を基盤とした取引であるといううわべだけを利用して、実際は多くの場合、重要な海外企業や産業、テクノロジーの取得を狙う国家主導の対外投資をしようとすることがほとんどです」

ドイツに対する中国の欲求

中国はヨーロッパ中の企業の買収を進めています。ローディアムグループとMERICSによる報告書によると、昨年は約300億ユーロ(約3兆8700億円)を投資しています。

このような買収には中国政府が主要な役割を果たしています。国有の事業体がヨーロッパにおける中国の投資額に占める割合は、2016年の35%から2017年には一気に68%に増加しています。

中国の投資家たちにとって、ドイツ、フランス、イギリスが最も魅力的な国で、中国の全EUに対する投資の75%を占めています。

しかし、中国のドイツ企業への直接投資は2016年の110億ユーロ(約1兆4190億円)から2017年の18億ユーロ(2321億円)へと大幅に減少。ドイツにおける立法の遅れも減少理由の1つです。

ここ2年間、海外投資家に対する懸念が指摘されるようになり、ドイツ政府も監督権と拒否権の強化を迫られました。しかし、中国の投資が大きく減少した背景には、大規模買収のタイミングも影響しているのではないかと報告書は見ています。そして、ドイツは依然として中国の投資家にとって非常に魅力的な投資国であると考えられています。

保護貿易の意見の高まり

ドイツでは2016年に中国の家電メーカー「美的集団」が、産業用ロボット大手「クーカ」を買収してから、技術流出などへの懸念が高まり、17年には欧州連合(EU)域外企業による買収規制を強化しました。

中国の基金によるドイツの半導体メーカー「アイックストロン」の買収が阻止されたほか、最近では、精密機械メーカー「レイフェルド・メタル・スピニング」の買収も阻止。この会社は、従業員200人ほどの小規模な製造会社で、宇宙船や航空機の部品製造技術で知られ、原発など核関連分野にも利用されています。

2018年4月23日、ドイツのハノーファーで行われたハノーファーフェアで、ノンアルコールビールを注ぐクーカ社のロボット (JULIAN STRATENSCHULTE/AFP/Getty Images)

ドイツの規制強化は中国の投資に対する世界的な反発の一環にすぎません。

イギリスも7月に、国家安全保障上の懸念を引き起こす英国の資産の外国買収を防ぐ政府の権限を拡大する120ページに及ぶ政策を公表しました。ファイナンシャルタイムズによると、この動きは、主に中国とロシアの投資家を対象としています。

メイド・イン・チャイナ2025

中国政府は3年前に「メイド・イン・チャイナ2025」計画を公表しました。この中では、高度な情報テクノロジー、ロボット、航空、そして新しいエネルギーを使った乗り物など10のハイテク業界で優越権を得るという目標を発表しました。

この経済的な野望を実現するために、中国政府は産業スパイ、情報窃盗、市場へのアクセスを認める代わりの強制的なジョイントベンチャー、機密性の高いテクノロジーを取得するための海外企業の買収といった様々な手法を使っています。

外交問題評議会の報告書によると、中国の政治家たちはドイツの「インダストリー4.0」構想を「徹底的に研究した」そうです。「インダストリー4.0」構想は、国をハイテク大国に変えることを目的としています。

「もっとも、『メイド・イン・チャイナ2025』で示された目標は、ドイツ、アメリカ、韓国、日本といったハイテク経済の仲間入りができるほど優れたものではなく、ましてやこれらの国に取って代わることができるようなものでもありません」と外交問題評議会の報告書は述べています。

メイド・イン・チャイナ2025は、2025年までにハイテク産業における核心部分と基本的な材料の70%の自給率を達成することを目標としています。

「これは、ハイテク部門が産業における生産高や輸出において大きな割合を占めている韓国やドイツのような国々にとって大きな脅威になります」と報告書は述べています。

アメリカはさらに厳格な審査プロセスを採用

アメリカにおける中国の投資による脅威に対処するため、議員たちは最近超党派による法案を可決しました。新しい法律は、対米外国投資委員会(CFIUS)の監視と権限を改めることを目的としています。対米外国投資委員会(CFIUS)は、対外投資によってもたらされる国家の安全に対する脅威を監視する省庁間の委員会です。

新しい法律は重要な一歩です。というのも、この法律はアメリカ政府がより多くの取引を監視することを認めることになるからです。トランプ大統領は早く法案を可決するように議会に働きかけました。

新しい法律、「外国投資リスク審査近代化法」(FIRRMA)は、対米外国投資委員会の権限を、新しい取引を委員会の検証機関のもとで検証できるようにすることによって、強化します。委員会は、重要なインフラやテクノロジーに関わる企業が譲渡される場合の監査をすることができます。

エゼル氏によると、中国の投資をより綿密に検証しようとする動きが各国で起きています。

「米国、ドイツなどの国々が、買収提案の背後にいる真の投資家が誰かを見極めるために、より厳格な審査プロセスを設けることは適切だ」とエゼル氏は言います。