【中国】後遺症の子ども続出の中国不正ワクチン「ぜったいに許せない!」

中国で大規模な不正ワクチン問題が相次ぎ、国内外に大きな波紋を広げています。ワクチンメーカーの長春市長生(ちょうせい)生物科技と武漢生物製品研究所が製造した、国の基準に適合しない乳児向け三種混合ワクチンは、65万本にものぼることが発覚しました。ワクチン被害者の家族は集団で、ワクチンメーカーに対し説明を求めるとともに、業界への監督管理を怠った政府関連部門に対しても責任を追及するよう、社会に訴えています。

韓国Arirang国際放送 キャスター マーク・ブルーム氏

「中国社会で強烈な抗議の声が広がっている。狂犬病ワクチンメーカーによる生産記録のねつ造が発覚した」

CNN キャスター クリスティ・ルー・スタウト氏

「中国でワクチンメーカー1社が、25万本の不正ワクチンを販売するという深刻な不正行為が発覚した。ワクチンを製造した長生生物科技に対し、中国全土で親たちの怒りが爆発している」

一連のワクチン事件の発端は715日、中国製薬大手、長生生物科技の従業員が、狂犬病ワクチンの違法製造を告発したことで、その後、同社に対して行われた非通知検査で、不正が事実であることが判明しました。

それからわずか3日後の18日、長生生物科技は344万元、日本円で約5600万円の罰金の支払いを命じられましたが、その理由は、昨年11月に同社が製造販売した三種混合ワクチン25万本が「効果指標」基準に適合していなかったことでした。

さらに武漢生物製品研究所が製造販売した三種混合ワクチン40万本にも不正が見つかったことで、山東省、重慶市、河北省に、約65万本もの不正ワクチンが流通したことが発覚しました。

中国は乳幼児に対し三種混合ワクチンの強制接種を実施していますが、事件が起きてから9カ月経っても、当局は不正ワクチンの使用データや回収データ、ワクチンが基準を下回った原因などに対して何の説明も行っておらず、親たちの間では強い懸念が広まっています。

山東省済南市の王世霞さんは、「うちの子は2015年に長生生物科技の三種混合ワクチンを接種したところ、接種後すぐに異変が起こり医師からワクチンの副作用と診断されました。同じような子供はたくさんいますが、ワクチン被害者はこれまでずっと放置されてきました。被害を訴えた親は当局から拘束されたり、刑罰を与えられたりしています。私も身分証を政府から没収されました」と語っています。

山東省鄆城県(うんじょうけん)に住むワクチン被害者の親、王海蘭さんの子どもも、2010年に長生生物科技のワクチンを接種したところ障害が残りました。王さん一家はこの8年間、子どもの治療に17万元、日本円で約280万円を費やしたといいます。中央政府に陳情するため北京に出向きましたが、これまで何度も拘留されました。2015年には子どもを連れて北京に治療に行き、刑罰を科せられました。

王さんは、「子どもが被害に遭ったのですから、私たちには補償を要求する権利があります。ですが地元政府から弾圧され、私は18カ月もの間監禁されました。子どもは治療が受けられず、メーカーには賠償責任があるはずですが、何の救済もありません」と無念さをにじませました。

この14年間で、中国では少なくとも9つのワクチン事件が発覚し、多くの死亡者や後遺症障害者を出していますが、被害者の家庭は何の補償も受けられず、責任の所在もあいまいにされたままです。被害者側の弁護士としてこの問題に取り組んでいた唐荊陵弁護士は、2016年に が下されました。

この問題に対する世論の不満は高まる一方ですが、中国政府はインターネット上に書き込まれる関連情報を封鎖し続け、補償を望む被害者家族に対する弾圧も続けています。しかし、世間の怒りは留まるところを知らず、中国当局は7月23日、長生生物科技の会長ら4人を立件調査すると発表しました。中国のワクチン業界は利益率が80%にも上り、巨額の利益の独占業界だともささやかれています。官民癒着が常態化し、政府の監督管理も十分に行われていないなか、こうした不正ワクチンを途絶することは非常に困難であると言わざるを得ません。

時事評論家の唐靖遠さんは「健全な社会であれば、薬品の安全性を守るためにいくつかの防衛ラインがあるはずです。長生生物科技のワクチン事件が起きたのは、それら防衛ラインがすべて中国当局から潰されたりコントロールされたりして、その機能を正常に発揮できなくなっているからです。このことが、人々が絶望的になる理由なのです」と分析しています。

中国当局は被害者家族に圧力をかけ続けており、彼らの怒りの矛先をワクチンメーカーだけに向け、政府や党の監督責任は追及しないよう要求しています。しかし最近、ツイッターに「便所革命同盟」というアカウントが作成され、連日のように、ある落書きの画像が投稿されるようになりました。画像は北京、南京、杭州、上海などの小児病院のトイレのドアに書かれた落書きを撮影したもので、そこには被害に遭った子供たちの親の悲痛な叫びや当局への強烈な不満が記されています。

 

 
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